高齢者のうつ病の現状

高齢者が訴える精神の異常の中で最も多いのが、うつ状態である。高齢者のうつ病は、加齢に伴う身体的、心理的、社会的側面での様々な能力の衰えがストレスとなり引き起こされる。その人の持つ素因が発症要因となる若年者のうつ病とは異なり、長期化して繰り返されることが要因となる。例えば、持病が長引いて生活機能が低下するとあらゆる精神機能も脆弱化し、気分が落ち込み始める。そうなると、何をするにしても自信を持てなくなり、悲観的になって閉じこもりがちになるのだ。

また、心理社会的要因にも気を付けなければならない。特に、配偶者や友人との死別、生きがいや社会的役割の喪失、社会的孤立感の増大など、高齢者によくみられる喪失体験が抑うつ気分の発症に繋がる。さらに、うつ気分の大きな要因として注意しなければならないのが、高血圧や脳血管障害である。こうした脳循環障害は、うつ気分が併発する頻度があるとされていて、気分の異常が脳の重篤な障害の前兆として現れるケースも少なくない。

高齢者のうつ病では、状況要因によって引き起こされることもある。例えば思い通りに物事が運べない、失敗する、将来への不安や心配事などによって症状が出るのだ。具体的な症状は、気分が憂鬱になる、不安や焦燥感、絶望感、自責感を伴う。身体的な症状もあり、倦怠感や不眠、胃腸の不調が挙げられる。自ら命を絶つケースも多いため、周囲のサポートが必要不可欠となる。介護では本人をよく理解して、過ごしやすい環境を整えることが大切だ。