メンタルヘルスケアの重要性

高齢者のメンタル不調の背景には、これまでの人生では経験したことのないほどの強いストレスが要因の一つに挙げられる。定年退職による役割の喪失、配偶者との死別、病気による手術や入院など、人によっては精神疾患を引き起こすほどの重篤な不調に陥るのだ。この状態が長く続くと、自宅に引きこもるようになり、筋力の低下による転倒や認知症の発症へとつながるリスクが高まる。

筋力低下による転倒は、たとえ自宅であっても骨折や捻挫につながる。高齢者の場合、骨折すると長期間の入院が必要だ。その間、病院のベッドで寝た切りになると、筋肉が萎縮して動きが悪くなる。動きが悪くなると、ますます体を動かさなくなり、さらに筋力が低下する悪循環に陥る恐れがあるだろう。こうなると、人との接触が少なくなり、脳の働きまで鈍くなってしまうのだ。やがて、認知症を発症して生活の質が低下、そのまま寝たきりになることも起こる。

メンタルの不調を放置すると、最悪の場合前述のような経過をたどる恐れがある。介護保険があるとはいえ、要介護の高齢者と同居することになると、家族は多大な負担を強いられるだろう。場合によっては、退職して介護に専念せざるを得ないこともあるかもしれない。潤沢に貯金があれば別だが、そうでなければ経済的に破たんする可能性があるのだ。メンタルの不調は放置せず、早めに対処しよう。当事者が目に見えて気分が落ち込んでいる日が何日も続く、食欲が明らかに落ちている、楽しみにしている趣味に興味がなくなっているようだと感じた場合は、まず声をかけて本人の話を聞くようにしなければならない。